夏休みを利用して、特に理由もなく石廊崎(写真、伊豆半島の先端)へ。帰路、熱海駅で乗り換える。熱海駅のホームに立ち、ふと17年前のことを思い出した。
大学に進学するため郷里を出て上京したのが17年前。その時もこの駅で乗り換えた。列車を待つ間、空腹だったのでホームにあったコーヒースタンドでホットドッグを注文。既製品を温めただけのフニャフニャな(それでいて妙に人を惹きつける)ホットドッグを頬張っていると、隣にいた人に声をかけられた。
年齢は60前後だっただろうか。いかにも地元の人のような中年男性。コーヒーを飲んでいたのか、昼間からアルコールを飲んでいたのかは覚えていない。無論、会ったこともない知らない人。
どこに行くんだ、と問われたので、上京の途上であることと目的地を答えると、その男は「昔、俺はその街に住んでいた」と言った。そこからどう話が展開したのかは記憶にないけれども、最終的に私は自分の住所を紙ナプキンか何かにメモ書きして彼に渡し、東京行きの列車に乗り込んだのは確かだ。
今になって考えると、全く見知らぬ謎のオジサンに自分の住所を渡す、というのは少々、蛮勇を振るった感じがある……だからといって何があったわけではなかったが(ハガキの1枚ぐらいは来たかもしれない)。
現在の自分も、この程度の勇気は出すべきなのかもしれない。何か新しいことを始めないと、今の熱海駅ホームにそのコーヒースタンドが存在しないことを嘆くだけ――記憶を寂寥の源にするだけになってしまう気がする。
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